サドラーズウェルズの引退
日曜の早朝に海外から飛び込んだニュースに心を躍らせた競馬ファンも多かったと思いますが、北米に遠征しているカジノドライヴ(牡3、藤澤和雄厩舎)が当地のG2戦ピーターパンステークスを勝利しました。日本馬の海外遠征での勝利は昨年のシンガポール航空国際カップのシャドウゲイト以来になりますから、実に1年振りくらいの朗報ですね。次走は兄姉に次ぐ3連覇がかかったベルモントステークスになりますが、ここでもいいレースを期待したいところです。
私は以前から海外の競馬もわりとこまめに追っているつもりなのですが、今週ひとつ大きなニュースがありました。アイルランドで種牡馬として繋養されているサドラーズウェルズが、生殖能力の低下を理由に種牡馬を引退するとのことです。これは特に欧州の馬産界では大きな出来事として伝えられているのですが、ある意味「ひとつの時代の終焉」と言っても過言ではない大きなターニングポイントではないかと感じています。
かつて日本にもノーザンテースト、サンデーサイレンスといった大種牡馬が君臨した時代がありました。ともに日本の生産馬の血統分布を塗り替えたと言わしめるほどの影響力を発揮したわけですが、サドラーズウェルズはもしかしたらそれ以上に大きな存在だったかもしれません。英愛リーディングサイヤーに輝くこと実に14回、60頭以上のG1ホースを輩出してきた訳ですから、まさに時代の寵児であったと思います。
産駒はどちらかというと中長距離に強く、軽いスピード勝負よりも力を必要とする馬場を得意とすることが多いです。欧州の芝コースは一部の競馬場を除いてタフな馬場が多く、この特性が存分に生かされる土壌であったと言えると思います。逆に軽いスピードを要求される日本や北米では欧州ほど振るわないのですが、最近では母の父として活躍馬を多く輩出しているようにその影響が及ばないわけではありません。
長い種牡馬生活で輩出してきた産駒には後継種牡馬として活躍している馬も多く、欧州でガリレオやモンジュー、日本でもオペラハウスなどがいます。オペラハウスからはテイエムオペラオーやメイショウサムソンといった活躍馬が輩出されており、これからもサドラーズウェルズの血は広がり続けることと思います。既にリーディングサイヤーの座は明け渡しているので、日本でサンデーサイレンス亡き後に勃発したポストサンデー論争のような混乱は起き得ないかもしれませんが、一時代を築いた偉大な種牡馬として血統図には燦然と輝き続けるであろうと思います。
私は競馬はブラッドスポーツであり、血統なくして競馬は語れないと思っています。サドラーズウェルズの功績は末代まで語り継がれることでしょう。そしてその座を新しい種牡馬たちが争う。これこそが競馬を追いかける醍醐味のひとつではないでしょうか。
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