血統の多様化を垣間見たBC
エリザベス女王杯の枠順が発表されましたが、注目のブエナビスタは外枠の16番。これであとは天候さえ何とかなれば(重馬場が不得手という証左はありませんが切れが活きるのは良馬場でしょう)軸としては堅そうでしょうか。同期のライバルのレッドディザイアはいませんし、古馬混交になって以降のエリザベス女王杯は得てして「復活」の舞台になっています。この馬にとっては前走降着の汚名を返上する絶好のチャンス到来、かもしれません。
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先週アメリカでは第26回のブリーダーズカップが開催されましたが、クラシックで牡馬相手に快勝したゼニヤッタが話題をさらっていますね。これでデビューから負け無しの14連勝、しかも初めての一線級牡馬との勝負に勝ち、年度代表馬の称号をグッと引き寄せた感があります。本馬はこれで引退とのことですが、半姉のバランスもG1を3つ勝っている活躍馬と活力のある牝系ですから、子供にも期待したいところです。
こうやって海外の競馬に目を向けた時、ふと気がついたことがあります。例えばゼニヤッタの父は2002年のドバイワールドカップを勝ったストリートクライ。ターフを連覇したコンデュイットの父は2003年の凱旋門賞馬ダラカニ。このように若い種牡馬の子供たちが活躍しており、結果としていつの間にか世代交代が進んで血統地図が様変わりしつつあるのです。
個人的に競馬に興味を持った発端が「血統への興味」であったので、最初のうちは一生懸命血統を追いかけていました。リアルシャダイ産駒が1着から3着を独占した1995年の天皇賞春には言いようのない感動を覚え、現役晩年をリアルタイムで見ていたスプリント王・サクラバクシンオーの産駒たちがみな短距離で活躍している姿に納得して感心していました。しかし最近はやや興味が薄れてきており、疎くなりつつあります。
その理由は簡単で、サンデーサイレンスとその後継種牡馬たちが幅を利かせるようになった、ここ10年あまりの日本の血統情勢に虚しさのようなものを感じているからです。希少な存在だった父内国産馬の方が多くなってしまい、逆に輸入種牡馬の子供や外国産馬が少なくなってしまった今の構成は、馬産地としては良いのかもしれない(かどうかも定かではない)のですが、バラエティに富んでないというか「どこを切ってもサンデー」みたいな金太郎飴の如きイメージがあります。
確かに、そういう歴史の繰り返しであるのは洋の東西を問わない話ではあります。サラブレッドの血統上に大きな版図を広げた大種牡馬というのはいつの時代にも存在し、傍系の血は淘汰されていく運命にあります。しかしそれは盛衰の反復であり、隆盛を誇った血統にも必ず谷間がやって来て、その時は群雄割拠の戦国模様が繰り広げられます。日本は今なお大種牡馬サンデーサイレンスの余韻を引きずったままですが、世界の血統情勢は今まさに戦国時代に入っているように思います。
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上に挙げたブリーダーズカップ・ターフの勝ち馬コンデュイットは、来年から日本で種牡馬入りすることが決まっているそうです。日本では活力が落ちて活躍馬が出なくなって久しいネヴァーベント系ですが、ヘイルトゥリーズンの系統を持たない血統構成の本馬は日本国内に数多くいるサンデーサイレンスやブライアンズタイムの肌馬とは相性が良さそうにも見えます。産駒から活躍馬が出てくることを期待したいですね。
ちなみに、今週のエリザベス女王杯に参戦してくるただ1頭の外国調教馬であるシャラナヤは、ニジンスキー系でも日本ではあまり馴染みのないロミタスの産駒です。日本の軽い芝への適応性が未知数で、馬券戦略的には取捨選択が難しい1頭です。例としては適当ではないかもしれませんが、このような血統の多様化の流れに追従していかないと血統から馬の特徴をイメージすることが難しくなっていくので、これを機に少し血統への興味を揺り戻していかなければならないかな、と感じる今日この頃です。
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