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2009.11.16

大穴決着は善か悪か

軸は堅いと思われていたエリザベス女王杯でしたが、思わぬ大波乱になりましたね。昔から穴狙いの常道として「人気薄の逃げ馬」とか言われますが、今回ばかりは本当によく言ったものだなと痛感しました。もちろん1着2着に粘った馬にしてみればしてやったりだったわけですが、負けてなお「この馬はすごい」と思わせたのは、僅差の3着にまで追い込んだブエナビスタ。上がり3ハロン32秒9ですか…瞬発力は古馬一線級にも引けを取らないですね。

ところで、こうやって何年かに1回くらいは発生する「あっと驚く逃げ切り」ですが、この結果に対してはいろんな反応があったみたいなので、少し取り上げてみたいと思います。

一昔前から競馬をやっている人であれば、大抵は「あー、やられた」「これは残る残る」「どうせなら逃げ切ってしまえ」とかいう感じで、ある意味開き直って楽しめる部分があるみたいです。誰しも一度や二度はそういうレースに遭遇しているはずですし、そんなレースで後方に沈んだ人気馬を責めたところでどうにもならないことは知っているから、でしょうね。

私の記憶にある穴馬の逃げ残りの例としては、サニーブライアンのダービーやイングランディーレの天皇賞あたりがパッと浮かびますかね。前者はともかく、後者には泡食ったクチです。同じ逃げ切りでもタップダンスシチーのような自分の強い形がある馬の場合はそんなに驚きもしないんですが、人気薄だとどうしても「してやられた」という印象が残りますね。

それに対して、近年の若いファンには「酷いレースだ」とか「こんなのG1じゃねぇ」とか憚りなく公言している人たちもいるようです。まあ気持ちは分かりますし、これがもっと接戦だったり人気馬に明らかな不利や失敗があったりしてたら、更に穏やかじゃなかったかもしれません。でもこの種の展開の綾は往々にしてありますし、それに賭けている人も少なからずいる(上位2頭は単勝で11番人気、12番人気なので更に人気の無い馬がまだ6頭もいる)わけですから、そういう意見は所詮「負け犬の遠吠え」でしかないんです。結果は結果であり、これも競馬です。

八百長だの成績操作だのという話もあったりしますが、じゃあそれをやることで誰が得をするのか、と考えてみたら良いと思います。鉄板決着だろうが大荒れだろうが、JRAの控除分は一定です。人気になることの多い大馬主やクラブの馬が飛んでしまう訳ですから、そのあたりのパワーバランスが影響している訳でもないです。増してや、特定の調教師や騎手に肩入れするなんてのはあまり意味をなさない話です。今回は素直に、田中博康騎手がうまく乗ったことを褒めるべきではないでしょうか。

ちなみに私の馬券も全然ハズレでした。ブエナビスタの相手にはミクロコスモスを推していましたが、道中ずっと折り合いを欠いていて全然競馬になっていませんでした。穴で狙ったニシノブルームーンも、この馬の走りはできたと思いますがG1では些か力不足でした。

さて、前回のエントリーで触れた欧州からの遠征馬シャラナヤについても少し触れておきます。いろいろな不安要素がある割には人気になっていた同馬ですが、結果は前とは差があったものの4着と善戦。しかも上がり3ハロンで33秒台の脚を使っており、これは日本の馬場に適性を見せたと言って良いのではないかと思います。同馬はこのまま日本に滞在してジャパンカップに出走する予定だそうで、なかなか面白い存在になるのではないかと期待しています。と同時に、今後日本の競馬界でもロミタス産駒の評価が上がるかもしれません。

昔は海外からの遠征馬が来ると「がんばれ日本」みたいな気持ちになっていたのですが、海外馬が日本で結果を出せなくなって久しい昨今では、逆に新鮮味があって良かったように感じました。今年はジャパンカップダートにアメリカの牡馬クラシック勝ち馬として初めて参戦する馬(ベルモントステークス勝ち馬サマーバード)もおり、こちらにも注目しようと思っています。

ともあれ、結果が大荒れになろうが何だろうがそれはそれとして受け入れられないと、やってられなくなりますよね。競馬は穏やかな気持ちで優雅に楽しむのが一番だと改めて実感した、そんなエリザベス女王杯でした。

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