« G1を7勝でも必要とされない血 | トップページ | 血統の多様化を垣間見たBC »

2009.11.09

仲介者という名のグレーゾーン

この土日はG1の中休み、というか今年最後のG1の無い週末だった訳ですが、個人的には土曜日に燃え尽きてしまい日曜日は馬券オフの日となってしまいました。武蔵野ステークス、狙いは悪くなかったと思うんですがダイショウジェットが抜けてしまい、ハズレ。鉄砲のワイルドワンダーをしっかり拾っていただけに悔やまれます…。

週末にはエリザベス女王杯が控えますが、今日は騎手の話を少し書こうと思います。

今年の騎手リーディング争いは近年稀にみる接戦の様相でしたが、現在は関東の内田騎手がトップ。定位置キープを目指す武豊騎手との差は14鞍で、まだ安全圏とは言えないものの全国リーディングの影が少し見えて来た?という雰囲気。3位の岩田騎手はこの日曜に年間100勝に到達しましたが、2位の武騎手との差は18鞍。事実上上位二人の戦いという感じです。

ところで、かつては年間に200勝も挙げていた武豊騎手が近年振るわない(とは言いつつもリーディングなのですが)ことに疑問を持つファンは多いと思います。意外なほど人気薄の馬に騎乗していることもありますし、先日のスプリンターズステークスは珍しくG1の騎乗馬が無く阪神での騎乗でした。こういう流れはどこに端を発しているのでしょうか。

現在の中央競馬では、陣営(馬主や調教師)から騎手への騎乗依頼の過程において、それを仲介する通称「エージェント」と呼ばれる人の存在が公にされています。以前は騎乗依頼を仲介することは明示的に禁止されていましたが、80年代~90年代初頭にそれを仲介する人が現れ、長く黙認してきたJRAは近年になってその存在を明らかにしました。このエージェントの存在こそが、今のリーディング争いに大きな影響を及ぼしているのではないかと考えています。

エージェントは一部を除いて競馬専門紙の記者、つまりトラックマンが占めています。ゆえに、同じ新聞社のトラックマン同士で騎乗馬を都合しあったりすることが往々にしてあるようです。また、一部のトラックマンは複数(多い場合は4~5人かそれ以上)の騎手のエージェントを兼任し、その中で騎乗馬を回したりする例もあるそうです。このようなつながりは俗に「ライン」と呼ばれており、現在は関東では競馬研究や日刊競馬、関西では競馬ブックがその影響力を大きくしているようです。

先述の武騎手も当然専属のエージェントを抱えていますが、ラインは持たず独立した存在です。武騎手は当代のトップジョッキーですから、同じレースの騎乗依頼が重複するケースもあります。依頼する側からすれば、ギリギリの段階で他の馬を選ばれると代わりの騎手を用立てるのは容易ではなく、仕方なく下位の騎手に依頼することもあるようです。一方、複数の騎手を抱えるエージェントに依頼した場合は、もしA騎手の騎乗が無理でもB騎手ないしC騎手なら乗れる、という持ち回しが可能になるため、依頼側のリスクが小さくなります。従って、有力な騎手を複数抱えるラインには馬が集まるようになる訳です。

問題なのは、これらエージェントの役割をトラックマンが行っているという点です。競馬はギャンブルであり、不正は絶対に忌避しなければなりません。そのために騎手や調教師には厳しい規制がかかっていますが、それを取材する立場のトラックマンはいわば治外法権的なポジションにあり、トレセン内を自由に行き来してこのような活動を行っています。もちろん、そんなマネジメントの傍らで自分の仕事、つまり予想も行っているのです。これが認められる現在のシステムには、個人的には疑問を感じます。

確かに、武騎手も不惑を迎えて若い頃のような勢いはないのかもしれません。腰痛の持病を抱えているのも、騎乗数を抑えている要因かもしれません。しかし、そういうものとは別のパワーバランスによって現在のリーディング争いは「操作」されているような印象があります。一人の騎手が突出するよりは競争原理が働いた方が健全ではあるのですが、これが果たして健全なのか…?というモヤモヤ感があるのも事実です。

なお誤解の無いように補足をすると、現在リーディング首位の内田騎手のエージェントも単独(しかも新聞社所属ではないフリー)の方のようです。だからという訳ではありませんが、彼がリーディングを取る可能性について、含むところや他意はありません。

競馬を楽しむにあたっては「予想には様々な要素を検証すべき」とは思いますが、できればこういうドロドロした部分には触れずに楽しめた方がいいなあ、と思う今日この頃です。

|

« G1を7勝でも必要とされない血 | トップページ | 血統の多様化を垣間見たBC »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。