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2009.12.01

ウオッカはルメールだから勝った?

ジャパンカップはなかなか見応えのあるレースでした。結局2センチ差ですか。オウケンブルースリ陣営からすれば十分勝てたはずのレースを落としたという思いが強いかもしれませんが、これがウオッカの生まれ持った力なのかなと妙に納得してしまいました。自分の馬券はオウケンからエアシェイディとリーチザクラウンを相手にしていたので、軸とヒモは来たけど相手が来ずという外し方でした。まあ堅い決着だったので、これはこれで良しとします。

さて、このジャパンカップでレース前から物議を醸し、結果としてそれが明暗を分けた話があります。それはウオッカの鞍上。前走まで跨っていた武豊騎手に代わってフランスのルメール騎手が手綱を取り、見事な復活劇を演じました。一方の武豊騎手はリーチザクラウンで果敢な戦法に出ましたが、結果は9着。今回はこのあたりを考察したいと思います。今日はいつもに増して長文です。

ウオッカのデビュー2戦目から4歳初戦の京都記念まで、その手綱を取っていたのは四位騎手でした(ちなみにデビュー戦は佐賀の鮫島騎手)。四位騎手を背に阪神ジュベナイルフィリーズ、そしてダービーと2つのG1を手にしましたが、一方で同世代のライバルであるダイワスカーレットに後塵を拝することも多く、最優秀3歳牝馬のタイトルも奪われてしまいました。正直、3歳秋の競馬振りは当代のダービー馬としては物足りない内容だった感は否めません。

4歳春のドバイ遠征時に武豊騎手に交代していますが、名目上は「ドバイで一番結果を出している日本人騎手」への乗り替わりということでした。しかしこの四位騎手→武騎手の交代劇は、奇しくもウオッカの父であるタニノギムレットでもあった出来事であり、両馬のオーナーである谷水氏としてはどこか大義名分のあるタイミングで武豊騎手に交代させたかったのではないかと感じます。確かにギムレットの時は皐月賞の騎乗内容が非難を浴びたということもありますが、それ以上に「最高の馬に最高の騎手を」という思いがオーナーにはあったのではないでしょうか。

話は逸れますが、似たような事例にメイショウサムソンの例があります。デビュー以来一貫して石橋騎手が手綱を取っていましたが、4歳秋に武豊騎手に交代しています。この時も、欧州遠征(馬インフルエンザの影響により断念)に際して「経験のある騎手へ」というオーナーの意向による乗り替わりでしたが、その後引退するまでの間に勝ち鞍が天皇賞秋ただ1つだったにもかかわらず、石橋騎手に手が戻ったのは落馬負傷による代役騎乗が一度のみでした。石橋騎手とサムソンのコンビでは、3つのG1を含む重賞5勝を挙げています。

ウオッカに話を戻します。武豊騎手を鞍上に迎えて以降で乗り替わりがあったのは今回が3回目で、1回目は昨年の安田記念、2回目が昨年のジャパンカップです。その2回ともに岩田騎手が手綱を取り、安田記念は圧勝。ジャパンカップは3着でした。前者は武豊騎手に先約があったため、後者は落馬負傷で騎乗できなかったため、という明白な理由がありましたが、特に安田記念では岩田騎手の騎乗は称えられ、同時に武豊騎手(この時点でウオッカとのコンビでは未勝利)とのコンビネーションへの疑問や、同騎手の騎乗スタイルや衰えに対する言及があったと思います。

実は、ウオッカという馬の成績には割と明快な傾向があります。元々気性的に難しい面があってコンスタントにパフォーマンスを発揮できないタイプなのですが、不思議なことに休み明けから3走目のパフォーマンスが特に高いのです。逆にいえば、休養明けや4走目以降では成績を大きく落としているケースが目立ち、これは好調が持続できないことを示しているものと考えています。

戦績を振り返ると、3歳春はエルフィンステークスからチューリップ賞→桜花賞→ダービー→宝塚記念のローテーション。初戦が負担の軽い内容だったことを考慮すると、桜花賞からダービーにかけてが好調のピークということになります。それでも負けた桜花賞は、想像以上にダイワスカーレットが強かったこと、裏を返せば四位騎手に油断があったということだと推測します。3歳秋は休み明けの秋華賞で3着に敗れ、エ女王杯は取り消し。それでもジャパンカップでは歴戦の古馬相手に差の無い4着に駆けていますから、3走目がピークという理論はあてはまりそうです。どちらの例もそれ以降大きく着順を下げています。

4歳以降もほぼこのパターンに当てはまるのですが、例外だったのが4歳秋のジャパンカップです。この時は叩き2走目の天皇賞で歴史に残る劇走を見せましたが、3走目のジャパンカップでは伏兵スクリーンヒーローに足元をすくわれました。この時の鞍上は、先述のとおり岩田騎手。今年のジャパンカップを見た今となっては距離云々は要因とは言えないですから、これが前走の反動なのか騎乗スタイルの問題なのか、いずれにしても勝てるレースをフイにしたという見方が出来ると考えています。

今回のジャパンカップはこの秋3走目で、この馬にとって最もパフォーマンスを上げるタイミングでした。そこでルメール騎手に乗り替わって見事に勝利しましたが、これがルメール騎手の手柄で武豊騎手とは手が合わない、或いは武豊騎手はルメール騎手に劣る、という話になるのかどうかです。見方は様々でしょうが、ここまでの考察からすれば恐らく武豊騎手が騎乗していても勝っていたのではないか…個人的にはそう思えるのです。

ちなみに、じゃあ何故馬券はオウケンブルースリからだったのかということになるのですが、ジャパンカップの前までは私の中でのウオッカの評価は「スピードが秀でたマイラー」で、2400mへの距離延長でパフォーマンスを上げることはないと考えていたからです。しかし今回の結果を受けて考察し直した結果は…そんなことは無かったみたいですね。

管理する角居師は「掛かるイメージを持っていない騎手に」という理由での交代を明言していましたが、天皇賞秋のレース後のコメントからは明らかに武豊騎手の騎乗への不満が感じられました。結果として乗り替わりが功を奏した形になりましたが、これで谷水オーナーは満足だったのでしょうか。私には、どうもモヤモヤしたところが残る結果になったように思えてなりません。

先のメイショウサムソンの件にしてもそうですが、馬主の人たちはやはり「自分の馬に武豊を」という思いが強いのだと思います。調教師にはそれを制して別の騎手を乗せようとする人も多いのですが、それが適切な判断かどうかは見ている側では分かりません。ただ、素人目にも武豊騎手は「日本で一番絵になるジョッキー」です。彼を背にした実力馬が勝利する姿が、私は一番好きです。

そんな訳で、今週のジャパンカップダートではヴァーミリアンと武豊騎手を応援しようと思います。

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